私のお父さんはこっちの世界の住人。
 私のお母さんはあっちの世界の住人。
 だから私には二つの血が混ざってる。
 小さなツノや真っ黒なシッポはお母さんに似て、性格はお父さんに似てるって言われる。
 お父さんとお母さんは政治家さん。
 あっちの世界とこっちの世界の戦争が終わってから、しばらくして結婚したの。
 友好の証しだっていって、持て囃されたって。
 私はお父さんとお母さんが大好き。
 私も政治家さんになりたいな。
 お爺ちゃん……お父さんのお父さんは、軍人さん。
 丁度、こっちの世界とあっちの世界が戦争をしていた頃、少しだけ偉かった軍人さん。
 お爺ちゃんは戦争を生き延びたって。
 でも、お爺ちゃんはその後に殺されちゃったんだって。
 戦争の責任をとらされたんだって。
 お爺ちゃんは世界のために戦ったのに。
 あっちの世界に侵略されちゃうのを、必死で食い止めただけなのに。
 私たちのために戦ってくれたのに。
 お爺ちゃんは殺されちゃったんだって
 お父さんは口癖のように、平和が一番、とよく言っていた。
 でもそのあと、決まって付け加えるのが、平和を保つためには戦うのも必要だ、だった。
 私にはそれがとても矛盾しているように思えたけれど、それでも言っている意味は分かった。
 特殊能力推進派のお父さんは、特殊能力規制派閥と争っていた。
 お父さんはいつも戦っていた。
 お爺ちゃんと同じように、お父さんは平和を守るために戦っていた。
 そして、お爺ちゃんと同じように、お父さんは殺されてしまった。
 意見の合わなかった誰かに、お父さんは殺されてしまった。
 戦いって、なんだろう?
 お父さんは強かった。
 お母さんも強かった。
 お母さんはお父さんが殺された後も、私をしっかりと育てて、守ってくれた。
 お母さんは言う。
 お父さんはルールを守って戦った。でもルールを破った人に負けた。世の中にはそういうことがよくある。けれどもあなたは、きちんとルールを守りなさい。
 理不尽なルールも多くある。あなたのお爺ちゃんはそれに準じて亡くなった。時にはそういう不条理なこともあるでしょう。それでも、それを受け入れる度量を身につけなさい。
 私は違うと思う。
 お母さんは尊敬しているけれども、私は違うと思う。
 ルールを破る世の中を、そもそも許しちゃあダメだ。
 絶対的なルール。
 破りようの無いルール。
 不条理なルールは私のルールで置き換える。
 そんなものを受け入れてたまるものか。
 お爺ちゃんが殺されなければならなかった理不尽なルールを、
 お父さんが殺されたルール違反を、
 そうそう軽く許してたまるものか。
 世界を変える。
 私が変える。
 ルールを変えてやる。
 私の世界を作ってやる。
 だから私はこの学校で、様々な能力者を調べ上げた。
 そして準備を整えた。
 世界を変える用意を終えた。
 しかしこれではまるで独裁者だ。
 誰かの意見を参考にするのは大切だ。
 私のお父さんも、そうしていた。
 戦っていたのだ。
 そういえば、能力者を調べているときに、少しだけ面白い経歴の持ち主が居たんだっけ。
 えぇと、確か……そうそう、青君だ。

 僕の能力が覗いた夢穂さんの一部。
 少しだけ見えた、彼女の背景。
 そして分かったのは、彼女が、意見を戦わせたがっていた、ということである。