「法律に触れれば裁きを受ける。これが世界のルール、そして夢穂ちゃんのルールなのよねぇ」

 と、時雨先輩は静止した空間で夢穂さんの身体に手を伸ばす。
 女同士なら良いのか、この時雨先輩が作りだした空間だから良いのか、時雨先輩は夢穂さんのオッパイを揉みし抱いた。

「さぁさぁ青君、早く逃げないと大変なことになるわよ?」
「大変なことって……どういうことですか」
「そりゃあもちろん、夢穂ちゃんに殺されちゃうのよ」

 時雨先輩は当然のようにそう言った。

「いや、どうしてオッパイを触ったくらいで殺されなきゃいけないんですか」
「青君、女の子の身体に触るってのは、ものすごぉく大変な罪なのよ? 大罪なのよ? だって昔からこの国はずっとそうだったんだから。女の子の身体に触れば罰せられる。社会で生きていけなくなる。つまり、社会的に殺されるってことよ?」

 なんということだ。
 僕はどうやらとんでもないことをしでかしてしまったらしい。
 ……そうだ、確か聞いたことがある。
 その昔、この国では日常的に、毎日のように、恒例行事のごとく社会的に殺されてしまった男性が大勢存在したという。
 軽はずみにオッパイを揉んでしまったことで……!
 僕の社会的生命は今、終焉を迎えようとしているのだ……!

「…………」

 僕が社会的に殺されてしまう、というのは、まぁべつにかまわない。
 ここで問題となるのは、社会的に殺される、ということはつまり、家族にも迷惑がかかるというところなのだ。
 僕の妹。
『瓦礫の積み木(クラッキングクラッカー)』。
 僕が社会的に殺されることで、性犯罪者の妹だというレッテルを貼られ、その後ずっと馬鹿にされ続けることだろう。
 いや、妹にしてみれば、それは痛くも痒くも無いだろう。
 壊れてしまった妹は、それに対して何も感じないだろう。
 だがしかし、僕はそうじゃあない。
 僕が、僕自身がどうなろうが構わないが、僕の妹が馬鹿にされることは許せない。
 僕がオッパイを揉んだことで妹が蔑まれるなど、あってはならないのだ。

「時雨先輩、僕はどうしたらいいんでしょうか」
「んん~? そりゃあ決まってるじゃない」

 時雨先輩は僕の後方を指差して言う。

「私が時間を作ってあげるから、逃げなさいな」

 と、時雨先輩は古典的ではあるがおそらく最も有効な手口を提案した。