彼女のローカルルール(完結)

ライトなラノベコンテスト用です。
中二的な能力物です。
色々な意味でライトです。

(第一回)ライトなラノベコンテスト二次落ちの作品です。
こんなんじゃあ落ちるよという参考にして頂ければ幸いです。

彼女のローカルルール 第二十条 ルール変更

 それから数週間後の放課後。
 廊下でバッタリと時雨先輩に遭遇した。

「あらあらぁ、青君じゃないのぉ。これから下校かしらぁ?」
「いえ、これから追試なんです」

 正確に言うと、追試の追試である。
 前回の追試でも、僕は合格点を取れていなかったというわけだ。
 
「ふぅん? それにしては、なんだか青君は楽しそうじゃなぁい?」
「いや、そんなわけないでしょう」

 いやまぁ、今回はしっかりと勉強してきたし、合格点を取る自信はあるが……。
 
「……時雨先輩は、世界を変えたかったですか?」

 僕は脈絡なくそんなことを聞いた。
 夢穂さんに期待して、世界が変わるのを期待していた時雨先輩。

「べつにぃ?」

 しかし先輩はそんな風に、特に気にする様子も無く答えた。

「私が見たいのは夢穂ちゃんの世界だからねぇ。どういう風に転ぼうとも、それが夢穂ちゃんの世界なら、私は一向に構わないし、それがどんな世界でも見てみたい。私も青君以上に、夢穂ちゃんが好きだからねぇ」

 続けて時雨先輩は言う。

「だって私はレズだから」

 時雨先輩はそんな言葉を残して去っていった。
 どうしようもない情報を提供してくれたなぁ……。
 いや、これは恋のライバルってことなのか?
 そんなことを思いつつ、僕は追試が行われる教室へと辿り着く。
 再追試の生徒は、僕ともう一人。
 扉を開けると、すでにその生徒は席についていた。
 およそ学校生活には相応しくないようなアクセサリーの散りばめられた制服。
 軽くウェーブのかかったボリュームのあるセミロング。
 そこから覗く小さなツノ。
 ウネウネと動く真っ黒なシッポ。

「よぉし青君、それじゃあ頑張って60点以上目指そう!」

 そんな感じで、僕と夢穂さんは一緒に追試を受けるのだった。



 了。 

彼女のローカルルール 第十九条 右左

 夢穂さんの世界。
 その一部を僕は見た。
 夢穂さん。
 世界を変えようとする夢穂さん。
 その世界を知ってしまった。
 僕の中に生まれた感情は、ふつふつと、心臓の奥で、温度をあげて、身体を熱くさせて、気分を高ぶらせる。
 だから僕は主張する。

「夢穂さん、僕は皆が自由に、平等に、分け隔てなく、誰もがオッパイを揉める世界を求めるぜ!」
「はぁ!? いきなり何言ってんの!? 気持ち悪いわね!」

 あうう。
 心がバッキバキに折られそうになったが、僕はギリギリで持ちこたえる。
 
「能力者の権利……特殊能力の規制に夢穂さんは反対だろ? それはつまり、能力者とそうでない者を平等に扱えってことだよな」
「……まぁ、言ってみればそうかしらね」
「ってことは、僕の主張と同じだ。僕はオッパイを誰でも平等に揉めるような世界を望んでるんだからな」
「それは違うわよ。全然違うわよ青君。そんな滅茶苦茶な論法で私を言いくるめようなんていい気になるのもそこまでよ。だって私は、平等に、能力者の権利を守れって言ってるんだからね。オッパイを誰にでも揉ませろ? ふざけないでよ青君。それはオッパイを揉まれる側の権利を完璧に無視してるじゃあないの」
「それはつまり、能力が怖い人たちの意見を無視してるってことだよな」
「……っ、もう! そんなの一緒にしないでよ! 能力は手足みたいなものなのよ!? それを規制するなんておかしいじゃないの! 手足を縛るようなものでしょ!?」
「一緒だよ。オッパイを揉むなって言うのは、男の煩悩を縛るようなもんだからな。何と言っても、男の煩悩は手足のようなもんだからね。それにさぁ、縛る縛るって、そりゃあご褒美かよ。能力者を自由にさせろ? ルールは縛るもんじゃあないのかよ」
「違うわよ! ルールは……守るもの。みんなを守るもの。私が能力者を守る。お父さんができなかったことを、やってみせる。そしてお爺ちゃんを殺したルールを変える。世界を変える!」
「それならオッパイを揉みたい側も守ってくれよ。それが本当の平等だろう」
「だから違うの! ちーがーうーの! そんなの暴論じゃないの!」
「なら夢穂さんは、どうしたらオッパイを揉ませてくれるんだよ!」
「は……はぁ!? あ、青君はどうしてそんなにオッパイを揉みたがるのよ!」
「そりゃあ夢穂さんに惚れちまったからに決まってんだろ!」

 ピシリ、と夢穂さんの表情が固まった。
 そして戸惑うように少しだけ後ずさりした。

「な……な……な、にを……」
「僕はもうどうしようもなく夢穂さんのファンになっちゃってんだよ。夢穂さんのその小さなツノも、小さなシッポも、世界を変えようとする性格も、とんでもない能力も、マジ天使な笑顔も、怒った表情も、戸惑った表情も、全部が全部、僕は気に入っちゃったんだよ。だから僕は夢穂さんのオッパイが揉みたい! ルールなんて全部無視して夢穂さんのオッパイが揉みたいんだ! 大好きな夢穂さんのオッパイが揉みたいんだ! 恋にルールは要らねえ!」
「……恋は下心って言うけどね」

 と、夢穂さんは呆れたように溜息を吐いた。
 
「さっきから青君、オッパイしか言ってないじゃない。そんな変態さんだとは思わなかったわよ。……でも」

 世界は戻る。
 ぐらついていた世界は、いつものように、崩れかけていたルールは平静を取り戻す。

「変態さんが好きな人のオッパイを求めるのは、仕方ないかもしれないわね。だから今回は言いくるめられてあげる。不問にしてあげる。不起訴処分にしてあげる」

 夢穂さんは僕の胸にトンと指先を置いて顔を近づける。

「青君の世界を認めてあげる。それが青君の求める世界なのね?」

 しかし僕は、もちろん頭を縦には振らない。
 世界とは単純ではないから。
 矛盾と矛盾と矛盾でできていて、ルールなんかでは縛りようがないからだ。
 だから僕は言う。

「まずは夢穂さんの世界を、もっと知ってから決めるよ」

 だって僕は、まだまだ夢穂さんのことを知らないから。
 もっと夢穂さんのことを知りたいから。
 能力を使ったら妹に気持ち悪がられるので、だから僕はゆっくりと、夢穂さんのことを、夢穂さんの世界を、少しずつ理解していきたいと、そう思うのだった。

彼女のローカルルール 第十八条 積み木の設計

 私のお父さんはこっちの世界の住人。
 私のお母さんはあっちの世界の住人。
 だから私には二つの血が混ざってる。
 小さなツノや真っ黒なシッポはお母さんに似て、性格はお父さんに似てるって言われる。
 お父さんとお母さんは政治家さん。
 あっちの世界とこっちの世界の戦争が終わってから、しばらくして結婚したの。
 友好の証しだっていって、持て囃されたって。
 私はお父さんとお母さんが大好き。
 私も政治家さんになりたいな。
 お爺ちゃん……お父さんのお父さんは、軍人さん。
 丁度、こっちの世界とあっちの世界が戦争をしていた頃、少しだけ偉かった軍人さん。
 お爺ちゃんは戦争を生き延びたって。
 でも、お爺ちゃんはその後に殺されちゃったんだって。
 戦争の責任をとらされたんだって。
 お爺ちゃんは世界のために戦ったのに。
 あっちの世界に侵略されちゃうのを、必死で食い止めただけなのに。
 私たちのために戦ってくれたのに。
 お爺ちゃんは殺されちゃったんだって
 お父さんは口癖のように、平和が一番、とよく言っていた。
 でもそのあと、決まって付け加えるのが、平和を保つためには戦うのも必要だ、だった。
 私にはそれがとても矛盾しているように思えたけれど、それでも言っている意味は分かった。
 特殊能力推進派のお父さんは、特殊能力規制派閥と争っていた。
 お父さんはいつも戦っていた。
 お爺ちゃんと同じように、お父さんは平和を守るために戦っていた。
 そして、お爺ちゃんと同じように、お父さんは殺されてしまった。
 意見の合わなかった誰かに、お父さんは殺されてしまった。
 戦いって、なんだろう?
 お父さんは強かった。
 お母さんも強かった。
 お母さんはお父さんが殺された後も、私をしっかりと育てて、守ってくれた。
 お母さんは言う。
 お父さんはルールを守って戦った。でもルールを破った人に負けた。世の中にはそういうことがよくある。けれどもあなたは、きちんとルールを守りなさい。
 理不尽なルールも多くある。あなたのお爺ちゃんはそれに準じて亡くなった。時にはそういう不条理なこともあるでしょう。それでも、それを受け入れる度量を身につけなさい。
 私は違うと思う。
 お母さんは尊敬しているけれども、私は違うと思う。
 ルールを破る世の中を、そもそも許しちゃあダメだ。
 絶対的なルール。
 破りようの無いルール。
 不条理なルールは私のルールで置き換える。
 そんなものを受け入れてたまるものか。
 お爺ちゃんが殺されなければならなかった理不尽なルールを、
 お父さんが殺されたルール違反を、
 そうそう軽く許してたまるものか。
 世界を変える。
 私が変える。
 ルールを変えてやる。
 私の世界を作ってやる。
 だから私はこの学校で、様々な能力者を調べ上げた。
 そして準備を整えた。
 世界を変える用意を終えた。
 しかしこれではまるで独裁者だ。
 誰かの意見を参考にするのは大切だ。
 私のお父さんも、そうしていた。
 戦っていたのだ。
 そういえば、能力者を調べているときに、少しだけ面白い経歴の持ち主が居たんだっけ。
 えぇと、確か……そうそう、青君だ。

 僕の能力が覗いた夢穂さんの一部。
 少しだけ見えた、彼女の背景。
 そして分かったのは、彼女が、意見を戦わせたがっていた、ということである。

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